プロ級の仕上がりを”自分の手”で実現する
「専門店でセラミックコーティングを頼むと10万円以上…でも自分でできるなら挑戦したい」
そう思っている中級者の方に朗報です。正しい知識と手順さえ押さえれば、DIYでもプロに近い仕上がりを実現できます。まずは正しい洗車のやり方と手順で、洗車の基本をおさらいしておくと安心です。
セラミックコーティングは、ガラスコーティングを超える耐久性・艶・防汚性を誇る最上級のコーティング。その分、施工難易度は高めですが、下地処理を徹底し、環境と手順を守れば、DIYでも3〜5年持続する高品質な被膜を形成できます。
本記事では、中級者が陥りやすい失敗を防ぎながら、プロ級の仕上がりを目指すための完全マニュアルをお届けします。
セラミックコーティングとガラスコーティングの決定的な違い
成分と被膜構造の違い
多くの人が誤解していますが、セラミックコーティングもガラスコーティングも、主成分は同じ二酸化ケイ素(SiO₂)です。
では、なぜ「セラミック」の方が高性能なのか?
その答えは「被膜の構造」にあります。
| 比較項目 | ガラスコーティング | セラミックコーティング |
|---|---|---|
| 主成分 | 二酸化ケイ素(SiO₂) | SiO₂ + 金属酸化物・炭素・窒素化合物 |
| 被膜の厚さ | 0.5〜2ミクロン | 3〜12ミクロン(重ね塗り可能) |
| 硬度 | 7〜8H | 9H〜 |
| 耐久年数 | 2〜3年 | 3〜7年 |
| 耐薬品性 | 中程度 | 非常に高い(酸性雨・融雪剤に強い) |
| 施工難易度 | 中 | 高 |
| 価格 | 3〜7万円(専門店) | 10〜30万円(専門店) |
セラミックコーティングは、SiO₂に加えて炭素や窒素などの化合物を配合することで、従来のガラスコーティングでは不可能だった「厚い被膜の形成」を実現しました。
この厚みが、圧倒的な艶・耐久性・耐薬品性を生み出しているのです。
DIY施工前に知っておくべき「3つの現実」
① プロ仕様の商品と市販品は”別物”
専門店で使用されるセラミックコーティングは、溶剤の濃度が20〜30%と非常に高く、その分施工難易度も高くなります。
一方、市販のDIY用セラミックコーティングは、初心者でも施工しやすいように濃度を5〜15%に調整されています。
つまり、DIYで専門店と全く同じ仕上がりを求めるのは現実的ではありません。
ただし、正しい手順を踏めば「専門店の70〜80%の仕上がり」は十分に可能です。
② 下地処理が9割を決める
セラミックコーティングの仕上がりは、「下地処理の質」で9割が決まります。
どんなに高価なコーティング剤を使っても、塗装面に以下が残っていると被膜が密着せず、すぐに剥がれてしまいます。
- 鉄粉
- ピッチタール
- 水アカ・イオンデポジット
- 油膜(既存のワックスやコーティング残り)
- 洗車キズ
「洗車→鉄粉除去→油膜除去→イオンデポジット除去→脱脂→研磨(必要に応じて)」
この一連の下地処理を徹底できるかが、DIY成功の鍵です。
下地処理の全体像をさらに深く知りたい方は、下地処理の正しい手順と重要性|艶とコーティングを長持ちさせる秘訣もあわせてチェックしてみてください。
③ 環境が仕上がりを左右する
セラミックコーティングは、気温・湿度・施工場所の影響を強く受けます。
| 条件 | 最適 | NG |
|---|---|---|
| 気温 | 20〜25℃ | 10℃以下 / 30℃以上 |
| 湿度 | 40〜60% | 80%以上(結露リスク) |
| 場所 | 屋内ガレージ(密閉空間) | 屋外・直射日光下 |
| 風 | 無風 | 風が強い(ホコリが舞う) |
真夏の炎天下や真冬の寒い日、梅雨の湿度が高い日は避けるべきです。
可能であれば、温度・湿度が安定した春(4〜5月)か秋(10〜11月)の施工がベストです。
必要な道具と材料【完全リスト】
下地処理用アイテム
| アイテム | 用途 | 推奨商品 |
|---|---|---|
| カーシャンプー(中性) | 通常洗車 | CARPRO|Reset 中性カーシャンプー 500ml |
| 鉄粉除去剤 | 塗装面の鉄粉除去 | CARPRO IronX アイアンエックス 500ml 洗車 鉄粉 除去 ボディ ホイール 粘土 |
| 鉄粉除去粘土(トラップ粘土) | 頑固な鉄粉除去 | シュアラスター 洗車用品 鉄粉除去粘土 ネンドクリーナー ノーコンパウンド S-83 |
| 油膜除去剤 | ワックス・油汚れ除去 | プロヴァイド OC メンテナンスクリーナー 300ml |
| イオンデポジット除去剤 | 水シミ除去 | プロヴァイド PROVIDE 黒ずみスケール除去剤 PVD-A06 80ml 刷毛付き |
| 脱脂剤(パネルワイプ) | 最終脱脂 | HIKARI 脱脂剤 DPA 500ml |
| コンパウンド(研磨剤) | 軽度の傷・くすみ除去 | GYEON ジーオン コンパウンド [ Q2M-CP12 Q2M-CP100 ] |
セラミックコーティング施工用アイテム
| アイテム | 用途 | 推奨商品 |
|---|---|---|
| セラミックコーティング剤 | メイン施工材 | 艶重視 Refract V3 Ceramic Quick Coat 艶特化セラミックスプレーコーティング 500ml 簡易タイプ AUTO FINESSE オートフィネス カラミクス ガラス セラミックプロテクションキット CRP-K2 国産・コスパ◎ HIKARI DIAMOND セラミックコーティング セット |
| アプリケーター | コーティング塗布 | マイクロファイバースエードタイプ |
| マイクロファイバークロス(拭き取り用) | 余剰コーティング除去 | 毛足の短いタイプ(2〜3枚) |
| マスキングテープ | ゴムパーツ保護 | 3M マスキングテープ 243J Plus 100mmX18m 243J 100 1パック ▼756-6191 |
| 油分除去剤(緊急用) | ムラ発生時の修正 | プロヴァイド OC メンテナンスクリーナー 300ml |
あると便利な道具
- 電動ポリッシャー(下地処理で研磨が必要な場合)
- LEDライト(ムラチェック用)
- 純水器(水シミ防止・最終仕上げ)
DIYセラミックコーティング施工手順【ステップバイステップ】
STEP 1:徹底的な下地処理(所要時間:3〜5時間)
1-1. 通常洗車
まずは、ボディ全体の汚れを落とします。
手順:
- 水圧で砂・ホコリを流す(高圧洗浄機があればベスト)
- カーシャンプーを泡立て、上から下へ優しく洗う
- しっかりすすぎ、水分を拭き取る
ポイント: ゴシゴシ擦らず、「泡のクッション」で洗うイメージ。
1-2. 鉄粉除去
塗装面を触ってザラザラしていたら、それは鉄粉です。
手順:
- 鉄粉除去剤をボディ全体にスプレー
- 1〜2分放置(液が紫色に変色=鉄粉に反応している証拠)
- 水で洗い流す
- まだザラつきが残る場合は、トラップ粘土で優しく擦る
ポイント: 鉄粉除去剤は長時間放置しない(塗装を傷める)。鉄粉の性質やケミカル剤/粘土の使い分けについては、鉄粉除去のやり方|なぜ必要?方法・注意点を徹底解説で詳しくまとめています。
1-3. 油膜除去
ワックスや排気ガス、花粉などの油汚れを除去します。
手順:
- ボディが濡れた状態で油膜除去剤をスポンジに取る
- 40cm四方ずつ、縦横に優しく擦る
- 水で洗い流す
ポイント: 力を入れすぎない。「撫でる」程度の力加減でOK。
1-4. イオンデポジット除去
白い白い水シミ(イオンデポジット)が残っている場合は除去します。
手順:
- マイクロファイバークロスにイオンデポジット除去剤を染み込ませる
- シミ部分を軽く擦る
- 水拭きで拭き取る
ポイント: 頑固なシミは数回繰り返す。それでも取れない場合は研磨が必要です。ウォータースポットとイオンデポジットの違いや、重症化したシミへの対処法は、ウォータースポット・イオンデポジットの違いと除去・防止方法で詳しく解説しています。
1-5. 研磨(必要に応じて)
軽度の洗車キズやくすみがある場合のみ実施します。
手順:
- コンパウンドをスポンジに取る
- 20cm四方ずつ、縦横に優しく擦る
- 水拭きでコンパウンドを除去
注意: 研磨は塗装を削る行為。やりすぎは禁物。
不安なら省略してもOKです。洗車傷のメカニズムや、傷を増やさない洗い方については、洗車傷の正体と防止方法|スワールマークを減らす洗車テクニックも参考になります。
1-6. 最終脱脂
これが最も重要なステップです。
コーティング剤の密着を阻害する油分を完全に除去します。
手順:
- ボディを完全に乾燥させる
- 脱脂剤(パネルワイプ)をマイクロファイバークロスに染み込ませる
- ボディ全体を拭き上げる
- すぐに乾いたクロスで仕上げ拭き
ポイント: 脱脂後は素手で触らない(皮脂が付着する)。

STEP 2:セラミックコーティング施工(所要時間:2〜3時間)
2-1. マスキング
ゴムパーツやプラスチックパーツにコーティング剤が付着するのを防ぎます。
対象箇所:
- ドアモール
- ウィンドウモール
- 未塗装バンパー
- タイヤ・ホイール
ポイント: 施工後すぐに剥がす(硬化後だと剥がしにくい)。
2-2. コーティング剤の塗布
ここが最も緊張する瞬間です。
手順:
- アプリケーターにコーティング剤を数滴垂らす
- 30cm × 30cmのエリアごとに薄く、均一に塗り込む
- 塗布後30秒〜1分以内に、マイクロファイバークロスで拭き取る
- 別のクロスで仕上げ拭き
重要ポイント:
- 一気に広範囲を塗らない(ムラの原因)
- 薄く塗る(厚塗りは逆効果)
- LEDライトで照らしながらムラチェック(光に当てると拭き残しが見える)
- 上から下へ施工(ルーフ→ボンネット→フェンダー→ドア→バンパー)
2-3. ムラの修正(万が一の場合)
もし拭き残しやムラが発生した場合、硬化前なら修正可能です。
手順:
- 油分除去剤(OCメンテナンスクリーナー)をクロスに取る
- ムラ部分を優しく拭く
- すぐに乾いたクロスで拭き上げ
- 再度コーティング剤を塗布
ポイント: 硬化後のムラ修正は困難。施工中のこまめなチェックが重要。
STEP 3:硬化・養生(所要時間:初期硬化12〜24時間 / 完全硬化2〜4週間)
初期硬化(12〜24時間)
施工後は、最低12時間(できれば24時間)は以下を厳守してください。
- 水に濡らさない(雨・洗車NG)
- 触らない
- 直射日光に当てない
- 屋内保管が理想
完全硬化(2〜4週間)
被膜が完全に硬化するまでには2〜4週間かかります。
この期間の注意点:
- 洗車はOKだが、強い摩擦は避ける
- ワックスやコーティングスプレーは使用しない
- 自動洗車機は避ける
ポイント: 完全硬化後の方が、耐久性・撥水性が高まります。
よくある失敗例と対処法
失敗① ムラになった
原因:
- コーティング剤の拭き取りが遅れた
- 厚塗りしすぎた
- 気温が高すぎた
対処法:
- 硬化前なら油分除去剤で除去→再施工
- 硬化後はポリッシャーで軽く研磨→再施工
失敗② すぐに剥がれた
原因:
- 下地処理が不十分(油分・鉄粉が残っていた)
- 脱脂を省略した
対処法:
- 下地処理をやり直し→再施工
- 特に脱脂は絶対に省略しない
失敗③ 撥水しない
原因:
- 初期硬化前に水に濡れた
- 被膜が薄すぎた
対処法:
- 初期硬化(12〜24時間)を必ず守る
- 2層目を重ね塗りして被膜を厚くする
失敗④ ホコリが被膜に入った
原因:
- 屋外で施工した
- 風が強い日に施工した
対処法:
- 必ず屋内(ガレージ)で施工
- 施工前に床を水で濡らしてホコリを抑える
施工後のメンテナンス方法
せっかく施工したセラミックコーティング、長持ちさせるための正しいメンテナンスを実践しましょう。
洗車頻度
推奨:2週間に1回
放置しすぎると、汚れが固着してコーティングを傷めます。
コーティングを長持ちさせる具体的な洗い方やNG行動は、コーティングを長持ちさせる洗車方法|艶を保つための正しいメンテナンス法でも詳しく解説しています。
洗車方法
- 手洗い洗車(自動洗車機は避ける)
- 中性カーシャンプー使用
- 優しく洗う(強い摩擦NG)
- 水分は完全に拭き取る(水シミ防止)
定期メンテナンス
3〜6ヶ月に1回:コーティングメンテナンス剤
市販のセラミックメンテナンススプレーを使用し、被膜を補強します。
おすすめ商品:
- HIKARI CONDITIONER
- IGLコーティング プレミア
- CarPro Reload
注意: ワックスは使用しない(コーティングと干渉する)。
プロ vs DIY:どちらを選ぶべきか
| 項目 | プロ施工 | DIY施工 |
|---|---|---|
| 費用 | 10〜30万円 | 1〜3万円 |
| 耐久年数 | 5〜7年 | 3〜5年 |
| 仕上がり | ★★★★★ | ★★★☆☆〜★★★★☆ |
| 施工時間 | 2〜3日 | 1日(下地処理含む) |
| 失敗リスク | ほぼなし | あり(初回は高め) |
DIYをおすすめする人:
- コーティングにかける費用を抑えたい
- DIY作業が好き
- 中級者以上の洗車スキルがある
- 失敗しても再挑戦できる
プロをおすすめする人:
- 最高品質の仕上がりを求める
- 時間がない
- 新車・高級車
- 失敗したくない
まとめ:DIYセラミックコーティング成功の3原則
- 下地処理を徹底する(鉄粉除去→油膜除去→脱脂)
- 施工環境を整える(気温20〜25℃・湿度40〜60%・屋内)
- 焦らず丁寧に施工する(小エリアごと・薄く均一に・こまめなムラチェック)
この3つを守れば、DIYでもプロ級の仕上がりは十分に可能です。
「初めてのセラミックコーティング施工」は緊張するかもしれませんが、丁寧に作業すれば必ず美しい仕上がりになります。
愛車に”最上級の鎧”を纏わせて、長く美しい状態を保ちましょう!
下地処理のステップをもう一度整理したい方は、下地処理の正しい手順と重要性も読みながら、今回のセラミックコーティングDIYに役立ててみてください

